原状回復ガイドラインのポイントとは!?③
前回は「原状回復ガイドライン」の考え方などについて解説しましたが、今回は「貸主が負担すべきもの」「借主が負担すべきもの」について原状回復ガイドラインの具体例をもとに解説しようと思います。
「原状回復ガイドライン」の具体例~貸主の負担とすべきもの~
以下の掲げるものは、一見すると、借主に負担を求めたいところですが、貸主の負担となるものです。
●通常の住まい方で発生するもの
①家具の設置による床・カーペットのへこみ
②テレビ・冷蔵庫などの後部壁面の電気ヤケ
③壁に貼ったポスターなどによるクロスの変色、日照などの自然現象によるクロス・畳の変色、フローリングの色落ち
④賃借人所有のエアコンの設置による壁のビス穴
⑤設備・機器の故障・使用不能(機器の寿命によるもの)
●建物の構造により発生するもの
①構造的な欠陥により発生した畳の変色、フローリングの色落ち、網入りガラスの亀裂
●次の入居者確保のために行うもの
①次の入居者を確保するために行う畳の裏返し・表替え、網戸の交換、浴槽・風呂釜などの取り換え、破損・紛失していない場合の鍵の取り換え
②フローリングのワックスがけ、台所・トイレの消毒、専門業者によるハウスクリーニング(入居者が通常の掃除を行っている場合)、エアコン内部の清掃
いかがでしょうか。
一昔前なら、借主の敷金から精算していた内容も「原状回復ガイドライン」においては、貸主負担とされています。
「原状回復ガイドライン」の具体例~借主の負担とできるもの~
●手入れを怠ったもの、用法違反、不注意によるもの、通常の使用とはいえないもの
①飲みこぼし等の手入れ不足によるカーペットのシミ、冷蔵庫下のサビを放置した床の汚損、引越作業等で生じた引っかきキズ、賃借人の不注意によるフローリングの色落ち
②日常の清掃を怠ったため付着した台所のスス・油、結露を放置して拡大したカビ・シミ、クーラーからの水漏れを賃借人が放置して発生した壁等の腐食、喫煙によるヤニ等でクロスが変色したり臭いが付着している場合
③重量物をかけるためにあけた壁等の釘穴・ビスで下地ボードの張替えが必要なもの、天井に直接付けた照明器具の跡、落書き等故意による毀損
④ペットにより柱等にキズが生じ、または臭いが付着している場合
⑤風呂・トイレ等の水垢、カビ等、日常の不適切な手入れもしくは用法違反による設備の毀損
⑥鍵の紛失または破損による取替え、戸建て住宅の庭に生い茂った雑草の除去
このように、借主の不注意や通常の使用をしていたら起こらないであろう汚れなどは、借主の負担とすることができます。
経過年数を差引く必要がある
しかし、「原状回復ガイドライン」においては、仮に、借主が故意又は過失によって建物を壊してしまったとしても、建物は年々古くなっていくので、その古くなった分を差し引かなければならないとされています。
経年変化・通常損耗分は、既に借主は家賃として支払っているものだと解釈されます。
「原状回復ガイドライン」では、借主の負担については、建物や設備などの経過年数を考慮して、年数が多いほど、借主の負担割を減少させるようにしなければならないとされています。
経過年数による減価割合については、本来は個別に判断すべきですが、「ガイドライン」は、目安として、法人税法等による減価償却資産の考え方を採用することになっています。
以下、耐用年数の一例です。
■壁紙、クッションフロア、カーペット・・・6年
■エアコン、インターホン・・・6年
■洗面化粧台・・・15年
■畳表替、障子紙、襖紙・・・消耗品で経過年数は考慮しません
■フローリング・・・経過年数を考慮しません
■室内ドア・玄関ドア・扉・建具・・・建物本体の年数
経過年数の考慮が6年のカーペットであれば、3年で退去する場合は、入居者の負担は50%です。
このように入居時点を100%、経過年数が満了した時点を0%として、退去時の経過年数の比率から賃借人の負担率を割り出して負担額を算出することになります。
借主の権利が一層強くなっていく印象ですが、賃貸住宅のオーナーは、借主のとのトラブル防止のためにも、また、入居率を維持するためにも、「原状回復ガイドライン」を一読して、内容の把握に努めてください。
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