相続財産の評価に関する最高裁判決について
最近、相続財産である不動産の評価について、いわゆる路線価評価ではなく、税務署が採用した鑑定評価額を認める最高裁判決がありました。
相続税対策の1つとして賃貸経営をされているオーナー様にとっては、大変気になる判決だと思います。ではその内容はどのようなものか、少しご紹介させて頂きます。
事件の内容
事件の概略は次のとおりです。
被相続人は、平成21年まで不動産賃貸業を営む法人の代表者でした。そして、亡くなる3年5カ月前に甲不動産を約8億3 7 0 0 万円( 借入金6億3000万円)で、2年6カ月前に
乙不動産を約5億5000万円(借入金4億2500万円)で取得しました。いずれも賃貸用不動産です。
平成24年6月に相続が開始し、相続人は、甲・乙不動産を財産評価基本通達に基づき評価し、購入資金として借りた借入金残高約10億円を債務控除し、小規模宅地等の評価減を適用した上で、基礎控除の範囲内で相続税ゼロという申告をしました。
これに対し、税務署は、評価通達第6項に基づき、不動産鑑定評価額により評価をし直し更正処分(相続税の総額を2億4049万8600円とするもの)を行いました。
なお、相続の9カ月後に相続人は乙不動産を約5億1500万円で第三者に譲渡しています。
最高裁第三小法廷の判決
今回の判決に先立ち令和4年3月15日に最高裁で口頭弁論が開かれました。弁論が開かれたことにより上告人(納税者)の逆転勝訴を期待する向きもありましたが上告は棄却され、国=税務署の勝訴が確定しました。なお、裁判官5名全員一致で、反対意見はありませんでした。判決の要旨は次のような内容です。
① 相続税法22条は、相続等により取得した財産の価額を相続時等における時価としている。税務署が採用した鑑定評価額は、それぞれの不動産の客観的な交換価値としての時価であると認められ、これが財産評価基本通達(以下、評価通達)の評価額を上回るからといって、相続税法第22条に違反するものではない。
② 他方、租税法上の一般原則としての平等原則は、租税法の適用に関し、同様の状況にあるものは同様に取り扱われることが要求される。
③ 被相続人と上告人らは、各不動産の購入・借入れが近い将来予想される被相続人の相続において、上告人らの相続税の負担を減免させることを知り、これを期待して、あえてこの購入・借入れを企画して実行したのだから、租税負担の軽減を意図して行ったといえる。従って、本件各不動産の価額を評価通達により評価した価額を上回る価額によることは、前記の平等原則に違反しない。
④ 以上によれば、各更正処分において、税務署長が本件相続に係る相続税の課税価格に算入される各不動産の価額を鑑定評価額に基づいたことは、適法というべきである。
専門家にご相談下さい。
相続対策のために借入れをして不動産の購入を検討されている方は、今回の最高裁の結果を知り、不安に感じていらっしゃるかもしれません。
今回の結果によって不動産を利用しての相続対策が全て否定される訳ではないと考えますが、今まで以上に不動産の購入・処分のタイミングや、資金調達の方法について念入りに検討する必要があるのではないでしょうか。
中京ハウジング(株)では、相続税の専門家と連携し、オーナー様の資産活用のアドバイスをさせて頂いています。いつでもお気軽にご相談下さい。
関連した記事を読む
- 2024/11/22
- 2024/11/19
- 2024/11/12
- 2024/11/08