賃借人の修繕権について
民法では、賃貸アパートやマンションで修繕が必要になった場合に、賃貸人に修繕義務がある事を定めています。2020年に改正された民法では、その修繕が賃借人の責に帰すべき事由によるものであるときは、賃貸人は修繕義務を負わないことを明文化しました。(改正民法606条ただし書き)
ただし、この場合においても賃借人が修繕を行うときには、トラブルを避けるために、修繕が必要となった旨を事前に賃貸人に通知のうえ、修繕についての承諾または対応の指示をが必要と思われます。
賃借人の修繕権
通常、建物を修繕する場合には、建物に物理的な変更を加えることが多いため、アパート・マンションの所有者(賃貸人)が修繕を行うことが一般的です。
しかし、賃貸人に修繕義務があるにもかかわらず賃貸人が修繕を実施しない場合、賃借人の生活に支障があるときにはしかたがないので、賃借人自ら修理を行うしかありません。現実にはそのように対応しているところですが、改正では、賃貸人が必要な修繕をしないときには、賃借人は賃貸人の同意を得ることなく自ら修繕を行うことができることを明文化して、賃借人に修繕権を付与しました。
【改正民法607条の2】
賃借人による修繕 賃借物の修繕が必要である場合において、次に掲げるときは、賃借人は、その修繕をすることができる。
一 賃借人が賃貸人に修繕が必要である旨を通知し、又は賃貸人がその旨を知ったにもかかわらず、賃貸人が相当の期間内に必要な修繕をしないとき
二 急迫の事情があるとき
なお、この規定に従い賃借人が修繕をした場合、賃貸人に修繕義務があったときには、賃借人は、賃貸人に対し、修繕に要した費用の償還を請求できるようになったのです。
トラブルは特約で回避しましょう
賃借人が改正民法607条の2に基づき修繕を行った場合でも、修繕の内容によっては、修繕の要否・範囲・方法・費用や急迫の事情であったか否か等については紛争が生じることが懸念されます。
小修繕については紛争の可能性は低いと思われますが、建物本体に影響を与え、高額の費用が発生する大修繕については紛争になる可能性が高く、注意が必要です。
本条に基づく賃借人による修繕についてのトラブルを防止するためには、賃貸借契約の締結に際し、
①建物の躯体に影響する大規模修繕については本条に基づく修繕権を有しない。
② ①以外の修繕を行う場合は、急迫の事情がある場合を除き、修繕内容・費用等について書面による事前通知が必要である。
などの特約を定め、賃借人が修繕できる範囲を当事者間で事前に定めておく必要があると思われます。
ご自身の賃貸物件の賃貸借契約書が、改正民法に対応しているか不安なオーナー様は中京ハウジング(株)までご相談下さい。
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