長期修繕計画の作成のポイントとは【後編】
後編となる今回は、まず皆さんの参考にしてもらうために、実際に事例として、①木造、②延床面積360㎡、③2DKファミリータイプ8世帯の賃貸住宅の「長期修繕計画書」を作成してみようと思います。
まずは、修繕計画の周期と予算をまとめたものが下記の表となります。
長期修繕計画書を作成する
一般的には、この先20年~30年を見越した「長期修繕計画書」を作成します。今回の事例では、30年の長期修繕計画とし、30年以降も経営を継続することを前提に、30年目にも修繕を行う計画としました。
立案した各設備の修繕計画を「長期修繕計画書」に落とし込むため、各設備の修繕の周期と予算を入れていきます。このように、修繕計画を落とし込んでいくと、30年間で必要な修繕費が分かります。
今回の事例では、30年間で必要となる修繕費の合計は、3,516万円となりました。
次に、その修繕費をどのように調達するかですが、一般的には、修繕積立金という形で調達を計画します。
今回の事例では、年間115万円を積み立てることで、ほぼ積立金不足が起こらず、修繕計画を実施できることがわかります。
現実の経営状況に合わせて周期や予算の微調整をする
現実的には、収益の状況によっては、正規の修繕計画を実施していくための修繕積立金を準備できないケースも起こってきます。
その際は、修繕計画の周期や設備の修繕にかける予算を微調整することで、修繕積立金の額を減らしていくことを考えていきます。
例えば、外壁や屋根の塗り替えを、15年ごとではなく17年ごとに実施したり、キッチンを交換するのではなく、キッチンを面材や水栓のリフォームのみ実施する計画にするなどして予算を減らす方法です。
あくまで、長期修繕計画を作る目的は、行き当たりばったりの対応をしたり、慌てて無計画な修繕を繰り返すことを防ぐためのものです。
そのために、計画に沿って修繕積立金を長期にわたって予算取りしていくことが大切ですので、実際に資金調達できることを見込んだ計画にすることが大切です。
長期修繕計画を作成しているオーナーはまだまだ少数派
国土交通省の調査(2017年3月)によると、長期修繕計画を作成しているオーナーは2~3割で、半数近くのオーナーは作成しておらず、3割以上のオーナーは「わからない」と回答しています。
また、長期修繕計画を作成しているオーナーの8割以上は定期的に大規模修繕を行っているのに対し、長期修繕計画を作成していないオーナーはわずか3.6%しか定期的な大規模修繕を行っていないという回答結果がでました。
お持ちの賃貸住宅が長期にわたって、高い家賃水準や高い入居率を維持していくためには、物件の資産価値を維持していくことが不可欠です。
物件が定期的に修繕されることなく、資産価値が落ちた物件は、入居率の悪化、家賃の下落を招き、収益が悪化し、さらに修繕費を賄うことが出来なくなってしまいます。
一方、計画的に修繕が行われる物件は、資産価値が維持され、高い入居率や高い家賃を維持していくことができ、高い収益を上げていくことが出来ます。
その結果、次の投資を行う資金が残っていくことになります。
賃貸住宅経営を正しいポジティブなサイクルで回していくためにも、早い段階で長期修繕計画を作成し、計画的な修繕をしていくことが大切だということをご理解いただけたと思います。
是非とも、今回の記事を参考にされ、皆様が長期修繕計画を作成され、安定した賃貸住宅経営を実現されることを願っております。
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