空室対策 その③-2 バランスを戻す
左側を重くする処方箋とは
左側を重くするのに「立地」という基準を変えるのは難しいので、残りの5つについて考えてみましょう。
まずは「サービス」
旅館であれば、「サービスが一番大事」と言う人が多いと思います。それほど、評判のいいお店は「サービスがいい」はずです。
でも、賃貸物件では「借主にサービスする」という概念がありません。この「入居者サービス」の行為を「テナント・リテンション」と言いますが、詳しいことは前回で説明させていただきました。
次は「賃貸の条件」です。
たとえば「礼金・敷金ゼロ」という条件は“一般的”になってきました。
「フリーレント」という、「最初の家賃を○ヶ月分はサービスします」という条件で、借主の「気を引く」方法もよく見られます。「ペットと一緒に暮らせますよ」という条件に変えて、新たな需要を掘り起こすケースもあります。「楽器OK」も同じ手法です。どちらも、多少は「専用設備」を設置する必要があります。
需要の少なくなった3DK等の部屋を「ルームシェアOK」にするのも「条件緩和」のひとつです。学生が3人で住めば、それぞれがワンルームに住むよりも、広く設備の良い物件を選ぶことができます。もちろんオーナーや賃貸管理会社は管理に気を遣うことになります。古い一戸建て貸家を、「ゲストハウス」と称して、複数の借主に一緒に暮らして
もらう「貸し方」が人気を呼び、マスコミにも取り上げられていますね。
借主の、収入などの属性や国籍や年齢で条件を設けていたものを「緩和する」のも、この中に含まれます。「外国籍の労働者」も「老人の一人暮らし」も、これから日本で増加するのは確実ですから、ひとつのマーケットです。
これらの条件緩和を「すべてお勧めしている」ワケではありませんが、条件という基準を考えただけでも、いくつもの「処方箋」が思い浮かぶことを知ってください。
次の基準は「設備」です。
賃貸物件は、新築時は最新の設備を「それなり」に備えていたはずです。時が経過し、その設備は老朽化して、取り換える必要に迫られます。「まだ使える」からといって「古びた」ままにしておくと、知らず知らずに秤(はかり)の左側が軽くなっていきます。「壊れたら直す」だけでなく、「古めかしさを防ぐ」ことも、秤(はかり)のバランスを戻す方法のひとつです。
そして、新築時にはなかった「人気設備」も登場しています。「インターネット回線」や「セキュリティ関連」のような設備は、10~15年前には珍しいものでしたね。
ファミリータイプのエアコンも「設置しない」のが当たり前でした。しかし今や、「無くてはならない設備」に数えられています。これらの設備は、新しく供給される物件が「当たり前」に備えているので、「設置されていない」と、それだけで秤(はかり)の左側が軽くなってしまうのです。
だからといって、「最新設備をすべて設置しましょう」と申し上げているのでもありません。たとえ部屋が埋まっても、収益の「帳尻」が合わなかったら「良い処方箋」とは言えませんから。
オーナーさんの賃貸物件のターゲット(どんな人に住んでもらいたいか)を絞り込めば、その人にとって「なくてはならない設備」が浮かび上がるでしょう。それは「手を打つべき方法」のひとつだと断言できます。
次は部屋です。
費用面から見て効果が高いのは「壁材の検討」です。ほとんどの賃貸物件は、「白系で無地のクロス」が選ばれているので、ここに色や柄を工夫すると「見違えるように」なります。このクロス(の一部)を「借主に選ばせる」というサービスも人気があります。これだけで秤(はかり)のバランスが戻りますから、検討する価値がある「処方箋」です。
このあとの「方法」は、「間取の変更」や「外壁の塗り替え」など、大規模なリニューアル工事になりますので、別の機会で取り上げさせていただきます。
空室対策の処方箋の第一歩は「秤(はかり)のバランスを取り戻す」ことです。このバランスが崩れている物件は、住み替えを検討しているお客様の「目に止まる」ことは難しいでしょう。
オーナーさんのパートナーとして信頼される賃貸管理会社なら、そのための「処方箋」を複数、示せることが必要です。でも、「バランスが戻った」からといって、それだけでは決まらないのが空室対策の難しいところです。
次回は、空室対策の第二歩についてレポートさせていただきます。
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