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2020年09月12日
賃貸経営まめ知識

キッチンの水漏れは契約不履行か?

 築25 年の賃貸アパートでキッチン付近からの水漏れ事故です。10 日間の工事が終わるまでキッチンの水の使用を控えていただきました。原因は配管に金属片が詰まり、それが腐食して水が漏れました。借主さんには家賃の1ヶ月分を「お見舞金」としてお支払いする旨を伝えたところ、「契約不履行なので支払った家賃、礼金、敷金を全額返して欲しい。1 ヶ月以内に出て行く」と内容証明郵便が届きました。

 最初から排水の流れが悪く、配管が正常かどうか、貸す前に調べておくのが大家の責任だ、と言うのです。私に「契約不履行」になるような責任があるのでしょうか。契約して1ヶ月足らずで起こったことです。

貸主さんの義務(?)

 この借主さんにとっては不幸な出来事ですね。

 築20 年の木造アパートでも、すべての設備は正常に使うことができるのが貸室の条件です。それを提供するのは賃料を徴収している貸主さんの義務です。

 10 日間キッチンが使えないと、食事は外食かコンビニの弁当などで我慢しなければなりません。手間もかかるし費用もかかったのでお気の毒なことです。そのような気持ち
を借主さんに対して持つことがまず大切です。

 ところで「貸主の義務」といっても、いつでも完璧に果たせるわけではありません。老朽化を伴う施設を貸すのですから、思わぬ不都合も起きます。今回の件で大家さんに責任が発生するのか、その責任の重さはどれくらいかは、事故の起こった原因や、その後の
大家さんの対応等によって判断されます。

 今回は借主さんが「契約不履行」を主張してるので、そこが争点になります。

 大家さん側に契約不履行となるような悪質な違反行為があったかどうかです。

貸主さんの責任(?)

 まず一つ目の質問です。大家さんは配管に金属片が詰まって腐食していたことを知ってたのに、それを隠して契約したのでしょうか?

 答えは、そうでは有りませんね。

 どんな事情で金属片があったのか定かではありませんが、大家さんは知らなかった訳です。

 次の質問です。大家さんは、「それ」を知らないで済まされる立場でしょうか?

 貸室を業としている方が、本来は知っていなければならないことは確かにあります。例えば築30 年以上の「旧耐震基準」の建物の場合、大きな地震に弱く国が耐震診断や補強を求めている事実を、大家さんは知らねばなれません。「知らなかった」では済まされませんね。

 では今回はどうでしょうか。

 キッチンの配管に金属片が詰まっていることを知るのは難しいですね。難しいのですが、金属片が詰まって、排水時に多少なりとも水の流れが悪い事態を「知らない」では済まされないと思います。なので、発見できずに貸してしまった大家さんの責任は全く「ない」とは言えないでしょう。

 でもそれは、契約不履行となるほどの重い責任ではありません。だから大家さんは1 ヶ月分のお見舞い金を申し出たのです。

 最後の質問です。

 事故が発覚した後、大家さんは修理のための行動を速やかに起こさず、そのまま放置したのでしょうか?

 これについては10 日間の工事期間は長すぎる、とは思います。2 回3 回と催促されて、やっと行動を起こしたとしたら無責任を指摘されてしまいます。

 この理由を尋ねると、すぐに水道業者を現地に送ったのですが、原因を調査するのに階下の住人の部屋に入るしかないところ、この住人との連絡がなかなか進まず、時間が過ぎてしまったようです。

 大家さんにも借主さんにも不幸な事態が重なったのですね。その事情やスケジュールについては、借主さんにもすぐに報告されていたそうです。

時には大人の対応も必要(?)

 以上を検証すると、今回の水漏れ事故について大家さん側に「契約不履行」となるような悪質な違反はないと判断できます。

 従ってお見舞い金1 ヶ月の提供でも十分な範囲ではないでしょうか。また、「公益財団法人日本賃貸管理協会」より、2020年4月1日から施行される改正民法第611条(賃借物の一部滅失等による賃料の減額等)に対応していくため、「貸室・設備等の不具合による賃料減額ガイドライン」を作成されており、その基準に照らし合わせても、十分だと考えられます。よって、退去するのでしたら敷金全額を返し、礼金や賃料の返還義務はないでしょう。ただし、借主さんは不満に思っていますから、簡単には納得しないし、最悪は少額訴訟に持ち込まれるかもしれません。それがイヤであれば話し合いで解決するしかありません。

 大家としての責任は果たしているとした上で、不幸な目にあった気の毒な借主さんのために、礼金も返すとかの譲歩を考えてもよいのではと思います。誰も住んで数ヶ月で引っ越したいとは思いません。新しい賃貸物件に住み替えるのに出費も大きいでしょう。

 今回の一番の被害者は借主さんであることは間違いありません。「契約不履行だ」などと突然に内容証明を突きつけられるのは腹立たしいでしょうが、「大人の対応」を考えることも大切だと思います。いかがでしょうか。

 マンション・アパート経営にはさまざまな問題が出てきます。中京ハウジング(株)は、オーナー様と一緒に問題解決に取り組んでいます。

この記事を書いた人
東原 相信 トウハラ ソウシン
東原 相信
不動産を持ち続けていればどんどん価値が上がるという「不動産神話」はすでに過去のものとなり、空室の増加や賃料の下落などに悩むオーナーの声をよく耳にします。つまり、賃貸経営は事業者(オーナー)の「経営力」の差が空室率に直結する時代が訪れました。私は、CPMとしての知識と経験で全力でオーナーの賃貸経営のサポートをいたします。
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