「釣り対策」と「空室対策」
「私はイチゴミルクが大好物だが、魚はどういうわけかミミズが大好物だ。だから魚釣りをする場合、自分のことは考えず、魚の好物のことを考える。」この言葉を書いたの、デール・カーネギーです。世界で何千万部も売れた、自己啓発の名著「人を動かす」の中
の名言です。きっと、お読みになった方も多いと思います。
入居者を魚に例えます。
いくら自分がイチゴミルクが好きだからと言って、魚釣りのエサは、魚の好きなミミズを使うのは当たり前、という話です。誰も「イチゴミルク」で釣ろうとは思わないでしょう。ところが、賃貸経営をしていると、その「当たり前のこと」が出来ていないケースも多いのではないでしょうか。
今回の例えは、「入居者が、魚」で、「賃貸物件は、エサや仕掛け」です。「賃貸物件のある地域は、漁場」で、「オーナーは釣り人」です。(入居者を魚に例えて、大変に申し訳ないのですが)
漁場は変化しています。
たとえば、25 年くらい前に、人に勧められて建てたアパートがあるとします。間取は2DKで面積は40㎡です。当時は需要がありました。この狭いスペースに、新婚から、親子4人くらいのファミリーが暮らしました。特に不満も感じずに、普通に暮らしていた時代です。つまり「魚の好むエサ」として、40㎡の2DKは、「それなり」の人気があったのです。「50㎡の3DK」も、「18㎡の1Kやワンルーム」も同じです。
設備についても、その頃は、ライフラインに必要な設備がついていれば良かった時代です。生活に便利な設備は、「自分の家を持つときに求める」という考えが主流でした。賃貸と持ち家に、あきらかなレベルの差があることを、多くの人が認めていました。みんな「いつかは持ち家」と考えていましたから。浴室乾燥機も、セキュリティ設備も、エアコンすらも、です。インターネットに至っては、この世に存在もしていませんでした。
しかし現在では、そのようなエサに、多くの魚達は見向きもしません。新婚さんなら2LDK、ファミリーなら自宅を購入します。(実際、家賃くらいの支払いで家が買えます)単身者でも、30㎡以上の広さは欲しい、といいます。求める設備に、持ち家と賃貸の間に差がない時代になっているのです。
オーナーが釣り糸を垂れている漁場・・・・。つまり、賃貸物件を所有している地域で、そこに住む魚達が好むエサは、完全に変化しています。なのに、「作ってしまった間取や設備だから」、「今さらお金をかけられないから」、あるいは、「元が取れるかどう
か保証がないから」と言って「好まないエサ」で魚を釣ろうとしています。この条件で「釣果を得る」には、時間がかかる、手間もかかる、妥協もする、ということを覚悟しなければならないでしょう。
有効な釣り対策、ではなく・・・・空室対策を
もし、今から賃貸経営を始めるなら、魚達が多くいる漁場(賃貸需要の多い地域)を選ぶことは可能です。魚達が好むエサと仕掛け(人気の高い間取タイプや設備)を準備することも出来ます。そして、時が過ぎたら「好みのエサ」が変化することも知ったうえで、
その心構えを持つことも出来ます。
しかし、何年も前から賃貸経営をしているので、今から漁場を変えることはできません。出来ることは、魚達の「今の好み」を知って、出来る限り「好みに近いエサと仕掛け」を用意することです。ただし、釣りと違って「賃貸経営は商売」なので費用対効果を考えなければならないことは、言うまでもありません。
空室対策は、費用と手間をかけて「物件力」を高めるか、家賃を「決まるところ」まで下げ続けるか、「ふたつにひとつ」です。もちろん、募集に携わっている者(つまり賃貸管理会社)が、一所懸命に、全力を振り絞って募集する、というのは大前提です。それこそ「当たり前」の条件ですし、そのようなパートナーを選ぶべきです。そのとき、「ふたつにひとつ」の、どちらを選ぶべきか、どちらか一方が正しい、ということではありません。オーナーさんの、賃貸経営に対する考え方や、この後の方針によって、答えは異なります。
でも、釣れなくなった現実があるなら、釣り人としての決断が必要な時期であることは、間違いありません。もし、「物件力を高める」方を選んだとしても、かけるべき「費用と手間」にも、多くの選択肢があります。知恵を絞ることによって「費用を抑える」ことは可能でしょう。だからますます、これからの「釣り」には、経験豊富なパートナーが必要不可欠なのです。
ぜひ、有効な釣り対策、ではなく・・・・空室対策を選んで、そして実施されることを願っております。
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