事故物件を考える
先月号のオーナーズ通信の記事をご紹介します。
映画「事故物件 恐い間取り」が8月末に公開されました。売れないお笑い芸人の山野ヤマメが、馴染みのテレビプロデューサーからの無理な要求に応え、殺人現場となった賃貸マンションに住むところから物語は始まります。ヤマメがマンションの室内を撮影してみると、偶然にも不思議な映像が撮れてしまい、それがテレビ放映され大反響を呼びます。自殺や殺人、変死事故がおきた物件、つまり事故物件に住む芸人として有名になったヤマメは周囲の心配もどこ吹く風で、次々と事故物件を渡り歩くようになるのですが……というのが映画のあらすじです。主演は人気アイドルで俳優の亀梨和也さんで、公開週の興行ランキングで1位になりました。
また、この映画には同名の原作(二見書房)があり、著者は「事故物件住みます芸人」と呼ばれる松原タニシさんです。続編も作られた原作本は2冊あわせて累計15万部と、こちらも人気となっています。まさに事故物件ブームと言っても過言ではないかもしれません。
事故物件を世に広めた「大島てる」
事故物件とは正式名称を心理的瑕疵物件といい、主に自殺や殺人、孤独死など嫌悪するような背景を持った不動産のことを指します。国会図書館のデータベースで「事故物件」を検索してみると、事故物件を取り上げた書籍や雑誌は僅かに76件しか表示がなく、そのほとんどは2010年以降のものです。ここ10年で事故物件という言葉が急速に知られるようになったわけですが、これには2005年開設の事故物件公示サイト「大島てる」が大きく影響したのは間違いありません。
「大島てる」は自殺や殺人があった物件を地図上に表示しているサイトで、4万件以上の事故物件情報が公開されています。1日100万件以上の閲覧があるほど、一般の利用者にも定着しています。
このサイトは、利用者からの投稿によって成り立っており、間違った情報が投稿されていることもあります。もし、間違った情報があれば、サイト運営者に削除要請が可能です。賃貸オーナーとしては所有する物件が間違って事故物件とされていないか確認しておくのも良いかもしれません。削除要請がなされると、該当する投稿は一旦、非公開となります。運営者によって事故物件であると確認できなければ、投稿は削除されます。ただし、事故が実際におきたことがわかれば、投稿は再び公開され、残念ながら削除はされません。
事故物件を7段階に分ける
事故物件の知名度が高まる一方で、事故物件の法律的な立ち位置はグレーなままです。その上で、何を嫌悪するかは、人によって大きく違います。そのため、間違った対処方法が不動産業界でも横行しています。
実は映画のなかでも「事故が起きた後に一度でも誰かが住めば、その次の入居者には事故を告知する必要がない」という台詞がありますが、実はこれには法的根拠は全くありません。また、事故物件とひとくくりに言っても、すぐに発見された孤独死と、自殺・殺人とでは受け取る側の印象は大きく異なります。それにも関わらず、「事故物件は家賃半額」といった決めつけで必要以上の値引きをしてしまうケースも見受けられるのです。
こうした状態を解消するために「成仏不動産」(運営NIKKEI MARKS)というサイトでは、物件を起きた事故内容によって細かく分けたうえで、事故物件の売買や賃貸の円滑処理を促しています。区分けは、最も軽い「お墓や火葬場、葬儀場が見える」から最も重い「殺人」まで、7つの段階に分かれています(※もちろんお墓や火葬場が見えても事故物件に該当しません)。
価格の下落幅が大きい「殺人」の物件だけを探して、購入したがる不動産投資家もいるようで、正しい情報を公開することで事故物件のいかし方が増えるということもあるようです。どんなに防ごうとしても、一定の確率で事故は起きてしまいます。もし起きてしまったら、正しい知識をもって対処したいものです。
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