マンション管理におけるカスタマーハラスメントについて
只今、絶賛理事会、総会準備に追われ、てんやわんやな管理スタッフOです。(←イニシャルでオーです。)
ちなみに「てんやわんや」の意味を調べてみると、“大勢の人が秩序なく動き回り、ごった返すこと。また、そのさま。”とのこと。
まさに今、社内はてんやわんや状態です!
さて今回は、近年様々な業界で問題視されている「カスタマーハラスメント(以下「カスハラ」と表記します。)」について触れてみたいと思います。
私たちマンション管理業界においても「カスハラ」は以前より由々しき問題であり、社員の退職理由の上位にランクインする問題となっています。
1.「カスハラ」とは
顧客が企業に対して理不尽なクレーム・言動をすることをいいます。
カスハラとクレームとの間に明確な線引きがあるわけではなく、クレームの中でも企業や従業員に対して度を超えた要求をするものなどいわゆる「行き過ぎたクレーム」が、カスハラに該当し得るものと考えられます。 また、カスハラの中には企業への要求を伴わない単なる嫌がらせもあります。
マンション管理業界における「カスハラ」とは、管理組合員等が管理会社に対して行う、業務妨害や名誉毀損にあたるような言動のことを指します。
対入居者様との対応においては、ある程度の許容は致し方ない部分は承知しているものの、一部の入居者による度を超す暴言や強要等で精神的に追い込まれてしまうケースも多々あります。
カスハラは、管理会社の社員の精神的な負担を増加させ、業務の円滑な遂行を妨げるだけでなく、場合によっては退職に追い込むこともあります。さらに、ひどい場合には、管理会社との契約解除に繋がる可能性もあります。
2.具体的な事例
以下のような行為がカスハラに該当する可能性があります。
・理不尽なクレームや要求を執拗に行う
・管理会社社員に対して暴言や脅迫を行う
・業務を妨害するような行為を行う
・管理会社社員の個人情報をSNS等で拡散する
3.「カスハラ」の対策
カスハラを未然に防止するためには、以下の対策が考えられます。
・カスハラとは何か、どのような行為が該当するのかを周知する
・管理会社との適切なコミュニケーション方法を指導する
・管理組合員からの苦情を迅速かつ丁寧に処理する
・カスハラに該当するような苦情は、毅然とした態度で対応する
・規約等にカスハラに関する条項を設ける
・カスハラ行為を行った場合の罰則を明記する
・規約等を管理組合員に周知徹底する
また、令和5年9月に国土交通省より「マンション化標準管理委託契約書」が改定され、「カスハラ」に対する以下条文が追加されましたので同コメントと併せてご紹介します。
■■■ 追加条文 ■■■
[第8条(管理事務の指示)]
本契約に基づく甲の乙に対する管理事務に関する指示については、法令の定めに基づく場合を除き、甲の管理者等又は甲の指定する甲の役員が乙の使用人その他の従業者(以下「使用人等」という。)のうち乙が指定した者に対して行うものとする。
[第12条(有害行為の中止要求)]
乙は、管理事務を行うため必要なときは、甲の組合員及びその所有する専有部分の占有者(以下「組合員等」という。)に対し、甲に代わって、次の各号に掲げる行為の中止を求めることができる。
一 法令、管理規約、使用細則又は総会決議等に違反する行為
(中略)
四 管理事務の適正な遂行に著しく有害な行為(カスタマーハラスメントに該当する行為を含む)
五 組合員の共同の利益に反する行為
六 前各号に掲げるもののほか、共同生活秩序を乱す行為
2 前項の規定に基づき、乙が組合員等に行為の中止を求めた場合は、速やかに、その旨を甲に報告することとする。
(中略)
5 甲は、前項の場合において、第1項第4号に該当する行為については、その是正のために必要な措置を講じるよう努めなければならない。
■■■ 同コメント ■■■
[第8条関係]
① 本条は、カスタマーハラスメントを未然に防止する観点から、管理組合が管理業者に対して管理事務に関する指示を行う場合には、管理組合が指定した者以外から行わないことを定めたものであるが、組合員等が管理業者の使用人その他の従業者(以下「使用人等」という。)に対して行う情報の伝達、相談や要望(管理業者がカスタマーセンター等を設置している場合に行うものを含む。)を妨げるものではない。また、「法令の定め」とは、建物の区分所有等に関する法律(昭和37年法律第69号。以下「区分所有法」という。)第34条第3項に規定する集会の招集請求などが想定される。なお「管理者等」とは、適正化法第2条第4号に定める管理者等をいう。(以下同じ。)
② 管理組合又は管理業者は、本条に基づき指定する者について、あらかじめ相手方に書面で通知することが望ましい。
[第12条関係]
① いわゆるカスタマーハラスメントは、「顧客等からのクレーム・言動のうち、当該クレーム・言動の要求の内容の妥当性に照らして、当該要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当なものであって、当該手段・態様により、労働者の就業環境が害されるもの」と定義されており(「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」(厚生労働省))、これは第1項第4号の「管理事務の適正な遂行に著しく有害な行為」に該当し、組合員等が、管理業者の使用人等に対し、本契約に定めのない行為や法令、管理規約、使用細則又は総会決議等(以下「法令等」という。)に違反する行為を強要すること、侮辱や人格を否定する発言をすること、文書の掲示や投函、インターネットへの投稿等による誹謗中傷を行うこと、執拗なつきまといや長時間の拘束を行うこと、執拗な架電、文書等による連絡を行うこと、緊急でないにもかかわらず休日や深夜に呼び出しを行うことなどが含まれる。なお、管理組合の役員も管理組合の組合員であるため、当然に本条の「組合員等」に含まれることに留意すること。また、カスタマーハラスメントが発生した場合又は疑われる場合には、「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」を参考とし、企業として毅然と対応すること。
② 管理業者は、報告の対象となる行為や頻度等について、あらかじめ管理組合と協議しておくことが望ましい。
③ 第5項は、カスタマーハラスメントが組合員等と管理業者の使用人等との間で起こり、その是正が必ずしも共同の利益とみなされない場合があることから、管理組合に是正に向けた特段の配慮を求めるために定めたものである。
■■■ 要約 ■■■
[第8条関係]
特定の区分所有者がフロント担当者を執拗に攻撃することを防止するために、連絡をする人と連絡を受ける人をあらかじめ決めておくことで、決められていない方からの連絡を断りやすくする。
[第12条関係]
「カスハラ」は管理会社のフロント担当者と特定の組合員等の間で行われることが多く、その他入居者(管理組合、役員含む)は個人の問題として関わり合いたくないとの心理が働き、無関心となることが多い。
上記状況が「カスハラ」を助長させる要因となっている為、今後は管理組合も関係者として対応しなければならなくなった。
4.まとめ
マンション管理におけるカスハラは、深刻な問題です。管理組合員、管理会社双方が協力し、「カスハラ」のないマンション管理を実現することが重要です。
「カスハラ」の問題だけではなく、人と人とが相対する場合においては『許容と寛容』が大切であることをお互いが心がけ、少しでも優しい世界になればと願うばかりです。
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